チェロとお昼寝

趣味のチェロとか とにかくもろもろ。アラ還主婦のつぶやき

80の手習い。。

先週のチェロの発表会。

平均年齢50歳は超えるようなメンバー(30人くらい)の中で、最高齢のお爺さまがいらっしゃる。

多分85歳くらい。。

80歳近くなってから、初めて楽器を習い始めたとか。。

器用な方ではない。

でも、決して諦めず、黙々と続けていらっしゃる。

5年くらい前に私が初めて発表会に出たとき、

お爺さまもまだ全然入門段階だった。

ピアノに合わせて弾いていらっしゃるのだけど、申し訳ないが、音程もリズムもめちゃくちゃで、スピードも超スロー。

何の曲かさっぱりわからないほど💦

止まって、また再開しようとしようと思ってもなかなか再開できず、ついには先生が出ていらして、せーの!と思いっきり後押ししてもらって、なんとか終えられた。

「あー。やっと。でも頑張ったねぇ」

と、会場にほっとした空気が流れた。

お爺さまも頑張るが、先生もキチンと対応していらして、どちらも凄いなぁと感心していた。

でも、これでは、練習するのも大変で、長くは続かないだろうなぁと思ってもいた。

 

楽器は、たとえ始めても、大概は長く続かない。なかなか上手にならないことにイライラして、諦めてしまう方が多い。とくに、大人になってからの楽器習得は、完全に自分だけの意志で続けることだから、子どもの習い事よりも挫折率は高い。

 

それに。。このお爺さまは、普通よりも器用な方ではない。ひとつひとつ習得するのに物凄く時間がかかる。だから、練習も大変だ。

しかも、年齢が高いので、身体も動きにくくなるだろうから。

続けるのは難しいだろうなぁ。と、思っていた。

 

しかし。

お爺さまは、辞めない。

時々、お爺さま情報が流れてきて、元気に続けられていることは聞いていた。予想外に頑張っていらっしゃり、凄いなあと感心していた。

 

そして、先週の発表会。

お爺さまの弾く曲は、かなりのレベルの曲だった。

Mendelssohnの無言歌

物凄くステキな曲だけど、結構難しい。

でも、お爺さまの好きな曲だったのだろう。

 

リハーサルで聴き始めたときは、「これ最後まで弾き切れるかしら?」と思った。

物凄くたどたどしい。

でも、5年前と比べて、音程はきっちりしているし、リズムとたどたどしいけれど、ちゃんとしたリズムだった。

難しいところは、止まりそうになるけど、ピアノの伴奏の方もちゃんと合わせてくださって、最後までひききった。

終わって、立とうとすると、よろっとされた。

若い生徒さんが、心配して駆け寄って行ったが、先生が制止した。

「大丈夫です。1人でちゃんとされますから、お手伝いはなくて大丈夫です。」

先生は、いつもお爺さまと付き合って、わかっていらっしゃる。

先生のおっしゃる通り、お爺さまは立て直して、楽器を持ってスタスタと退場なさった。

先生、凄い!

 

リハーサルが終わって、本番までの間に時間があった。

喋る人、練習している人。色々だ。

お爺さまは、控室にこもって、黙々と練習されていた。

練習が終わって、出てこられて目が合ったので声をかけた。

「凄く上手になられて、ステキでした!」

ちょっと上から目線の発言かな?と思ったけど、正直な思いだったので、そのまま言った。

お爺さまはちょっと照れたように。

「いやあ。ピアノなしだともっとスラスラ弾かれるんだけど、ピアノがつくと訳わからなくなっちゃって。」

とおっしゃっていた。

ピアノ合わせは、2回だけ。

あのゆっくりのスピードだと、CDに合わせて練習するのは無理だろうから、いきなり生のピアノで合わせるのは大変なのだろう。

でも、本番のギリギリまで頑張る姿勢。

「今更焦ってもしかないしー」と、のんびりおしゃべりしている私とは全然違う💦

 

本番。

たどたどしかったけれど、見事に引き切られた。

そして、ふらつくことなく、ぱしっ!と立ち上がって、舞台袖に戻っていかれた。

見ているわたしたちは、その姿勢に感動して、

終わってからも「すごいよねぇ。」と感動を伝えあった。

大人の習い事は、自分の進む速度が全然違うし、方向性も違う。

物凄く頑張るひともいれば、のーんびりマイペースの人もいる。

子どものお稽古事に比べて、大人は習得するスピードが遅い。

だから、お爺さまのように、自分のペースをキチンと作って、とにかく続けていくこと。大人の習い事は、とにかく続ける。これなんだよなぁ。と教えていただいた、発表会でした。