チェロとお昼寝

趣味のチェロとか とにかくもろもろ。アラ還主婦のつぶやき

オーケストラに入る「暗号」

最近、昔読んだ本を読み直しています。
とは言っても、前の本は全て処分してしまったので、記憶をもとにAmazonでまた買い直ししている状態ですが。題名忘れていても、レビューがあるので、探し出すことが出来て、欲しいものがまた手元にやってきます。ひと昔前ならそんなことは出来なかったでしょうから、良い時代に生まれたものです。
岩城宏之さんの本も何冊か買いました。
岩城さんは、15年ほど前に73歳で亡くなった国際的な指揮者です。芸大在学中からN響の副指揮者に抜擢されて、日本人で初めてウィーンフィルを指揮し、ベルリンフィルなど著名なオーケストラを指揮して世界中て活躍されました。日本でもアンサンブル金沢の設立、発展に尽力されました。
 そんな活躍で見聞きした話をもとに、沢山のエッセイを書かれています。
 文章も軽妙で読みやすく、クラシックの世界の垣根を低く低くしてくださいました。有名な指揮者から裏方の有名人まで生き生きとクラシックの世界を描いていらして、いま読んでも楽しいし、年をとって再び読むことで違う世界も堪能できて。ちょっと嬉しい時間を過ごしています。

私は、高校までピアノは習っていたもののクラシックはほとんど無縁でした。ただ、合奏をしたくて、ただそれだけで大学でオーケストラ部に入部しました。別にオーケストラでなくても吹奏楽でもマンドリン部でもギター部でも何でも良かったのです。
入学した大学の合奏は、オーケストラ以外にはギター部と軽音部と合唱がありましたが、最初に訪問したオーケストラ部が「初心者でもどうぞどうぞ」と言ってもらえたのと、大きな編成の方が人付き合いも広くなって良いかな?という理由でオーケストラに入りました。そして楽器選びも、よくわからない展開でチェロを弾くことになりました。
初めての弦楽器で、これは苦労するだろうなと思っていて、それは予想通りでした。それはそれで大変だったのですが、予想外に困ったのが飲み会やお茶会で繰り広げられる音楽談義がさっぱりわからなかったことで。
先輩の話はもちろん、同級生の話でさえ、さっぱりわからないのです。

片言しか喋れないのに留学して、周りが何を言ってるかわからない。。そんな感じで。
曲の話、指揮者の話、プロオケの話、作曲家の話。どれひとつわからない。

クラシック番組見ながら、この曲好き。とかこの人上手。とか言うことはあったけど、ケーキパクつきながら「モーツァルトはわかんないよなぁ」とか「僕はマーラーを弾きたいんだ」とか。。20歳そこらの若者が何を言ってるんだというような話と、「何番の何楽章のあそこのメロディ。良いよなぁ」とか、なんか細かいところまで。。

大人数ならわからなくてもウンウンと笑顔で頷いたり笑ったりしていればなんとかその場はやり過ごせるけれど、少人数になったときは、そう言うわけにはいかないので、本当に困りました。

???が頭の中を渦巻いて家に帰るとどっと疲れて。。とにかく、訳わからないから頭を活性化させるために早く寝ようと(笑)冗談みたいな話ですが、本当に早く寝ていました。まずは睡眠と(笑)

なんでみんなそんなに知ってるの?と聞くと、小さい頃から好きで聴いてたとか、親が好きだったから自然と聴くようになったとか。。
我が家は、たまにテレビでクラシック番組を見ることはあったけれど家庭内でクラシックが鳴ることは無かったし、クラシック好きの祖父は、もう他界していたし。

話は岩城宏之さんに戻ります。
岩城さんも全く「普通」の、音楽に関係ない、家庭で育ったようです。
しかし、小学生の頃、骨の病気で歩くこと動くことを禁止され、それでも腹這いで動き回る息子を心配したご両親が「寝たままで遊べるもの」と木琴を買い与えたそうです。丁度木琴の平岡養一さんが日本で大人気だったらしいので岩城少年の希望でもあったらしいのですが。
岩城少年は大喜びで弾き始めました。そこが岩城さんの「音楽こと初め」になります。
そこから先は岩城さんの本をそのままコピー

平岡養一さんのレコードが1枚だけ手に入った「ドナウ川のさざなみ」だった。楽譜と言うものの存在を知らなかったので、レコードを何回も聞いて覚え、それらしい真似事を1日中飽きずにやっていた。そのうちに僕のおもちゃの木琴では、どうしても出ない音がいくつかあることに気がついた。例えば「ファ」と「ソ」の間の音が欲しい。2つ一緒に叩いてもその音は出ない。音楽の本を買ってきてもらって、半音の存在を知り、せがんでおもちゃに毛の生えた位の半音付きのが、やっと手に入った。

中略

空襲の最中だったし、知り合いに音楽をやっている人もいなかったので、何もかも自分でやらなければならないのだ。でも暗号解読に成功して、まるで自分が音楽を発見したような気になった、その時々の喜びは大きかった。能率は悪かったが何でも最初から教えられながらやったのよりは、いちいち発見の喜びを味わったほうが、幸福だったかもしれないと思っている。

その先も岩城少年の「発見」は続きます。
そして芸大、N響副指揮者になり、世界的な指揮者になられるのですが。。

岩城さんと状況は全然違いますが、周りの話がわからなくて途方にくれた私は、何とかしなくては、と1人で考えました。

私の大学のオケの弦楽器は初心者が多くて、初心者でも3年生になると「トップ」というパートを率いていく立場になります。めちゃくちゃな話ですが、1年生の春に初めて楽器を触った人が、3年になると1番前で交響曲を弾くのです。下手したら、トップソロ(曲の中で1人だけで弾く)もあるかもしれないという、とにかく行け行けドンドンのあり得ない世界です。
しかも、トップになると演奏技術(?)も大事だけど他のパートとのやりとりも必要になってきて、技術も知識もない私がトップになったら(チェロ1人しかいなかったので必然的にトップになる)とてもとてもやっていかれない。考えるだけで怖い話で。

とにかくどうにかしなくちゃいけない。
それだけは確かで。
でも、どうすれば?っていうとさっぱりわからない。周りに相談すればと思うけど、あまりに初歩的で、恥ずかしすぎて相談もできず。
もう自力で頑張ろうと(笑)

で、
まずは、「曲を知ろう」と

そうは言っても膨大な量があるので、どこから手をつければよいかわかりません。
で、その訳の分からない(笑)友達の会話の中で出てくる曲を片っ端から聴くことにしました。
その日話の中で出てきた曲の名前をひとつ覚える。(1度に沢山は無理なので、1番メジャーそうなもの)
次の日レコード屋さんに行って、レコードを買いました。

どの指揮者を買えばなんてわかりませんけどカラヤンベルリンフィルは、知っていたので、そればかり。

そして、聴きまくりました。

来る日も来る日もレコードは鳴り続け。
家族からは、うるさい!と言われるので
プレーヤーを自室に上げて、また聴いて。

どうやって、聴くのか?なんてわかってなかったけれど、とにかく聴きまくって。話題に出てくる曲は沢山あるので、どんどん買ってどんどん聴いてました。
高校生まではあまり物欲がなく、お年玉を使うことなく、貯まっていたので、レコードは問題なく買えました。ありがたいことでした。

前は睡眠時間を確保して、鋭気を養っていたんですけど、今度は睡眠時間を削ってレコードを聴いていました。

で、

1年くらいたつとなんとなく友達や先輩の話がわかるようになってきました。「モーツァルトはわかんない」と言う状況にも慣れてきたし、「なんかわかる」と思えるようにもなってきました。やっと話の輪の中に入れたって感じです。

クラシックなんて膨大な曲があるのだから、話に追いつくには何百と曲を覚えなくてはいけないと思っていたんですけど、
スタンダードな交響曲20曲くらいと序曲数十曲知っていれば、話の輪に入ることぐらいなら充分だというのがわかりました。

もちろん、皆もっと知っているのだけど、そういう言わばマイナーな曲は、あまり話題に出ないし、例え出ても知らない人も多いから、もうその場で「どんな曲?」とか「誰かおすすめ?」とか聞いても、問題ないし。。
あとは、いつもの通り、レコード屋さんに行けばよいし、もうそのくらいになると
「テープとってきてあげる」
とおすすめのものをダビングしてくれる人も現れて。。楽に曲を知ることができるようになりました。

曲を知ってくると、指揮者やオーケストラ。これはそれぞれ好みがありますから、みんな語ってくれます(笑)
全く知らないときは、口も挟めませんでしたが、ちょっと知識ができると、「入門者」として、時々質問が出来るようになりました。特に少人数のときは、その質問で会話のきっかけが掴めて、集まりも楽しくなりました。

今思うと、そこがわたしの「オーケストラこと初め」だったと思うのです。
岩城少年のように、半音を見つけ出すような凄い発見はしなかったけれど、私なりにオーケストラ仲間に入る「暗号」を解いた気がします。
だから、下手くそでも、チェロさえあれば色々な団体に向かっていける状態になったんだと思っています。
まあ、度胸がついたということもあるんでしょうが。

ただ問題が。

団体に入って行かれるのは素晴らしいのですが、
「まあ迷惑にはならない」程度のもので。
戦力にはならないのです。

それは、技術が必要で。。。

それが大変。
やみくもにやれば良いもんでもないし。
1年そこらで身につくものでもない。
ゴールはないし、一息つけるところもないのでしょうが。

多分、チェロが弾けなくなる最後の日も答えは出ていないと思います。
でも、
こちらの「暗号解読」
急ぐことはないので。焦ることもないので。。。
私なりのテンポでやればいい。

ちょっとずつちょっとずつ 楽しんで解読して行こうと思います。

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